Crop blog

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2018 御蔵島ドルフィンスイムツアー (後編)

CROP.-MINORI クロップ みのり
=収穫物、実り

自然界では種によって、成長のスピード、実らせる時期、実らせるモノがちがう。

子どもたちにも、それぞれのペースで、自分だけの実を実らせてほしい。

そんな想いで名付けたCROP.-MINORI

その意味を、子どもたちが確かな形で見せてくれた2018年の御蔵島でした。

クロップハウスでは現在、小1〜高1までの6人の子どもが生活しています。

その彼らが、今年もそれぞれのペースでそれぞれの実を実らせました。
大人の想像をはるかに超える実り。

御蔵島7年目にして初めて近くでイルカとの対面を果たした高1女子。
彼女はイルカが好き。
でも海が怖い、自信がない、無理だ、と今年も話ていました。

昨年の彼女は、イルカウォッチングの船が出るのに、準備ができていない。
怖いから体が動かない、固まる。
毎年御蔵島に来ているので、流れは十分把握している。
それなのに、体が動かない。

イルカと泳ぐために、プールで練習もしてきた。
泳げるようになった。
それなのに動かない。
そんな彼女と私達は、本気で心のぶつかり合いを積み重ねてきました。
彼女は、泣く、泣く、泣く。

御蔵島訪問7度目。
初日、御蔵の港で泳ぐ練習をする時も、体は固まっていました。

その彼女の手を海から引っ張り、背中を押しなんとか海へ。
泣きながら、笑いながら、文句を言いながら、ライフジャケットと浮き輪に守られ、
私と固く手をつなぎながら浮かんでいました。

はじめの一歩がとても重く、踏み出すまでに時間がかかる彼女。

いよいよドルフィンスイム本番。
毎年、一番最後に海に入っていた彼女。
今年は早く準備をさせ、一番に海へ入るよう作戦をねっていました。

イルカを見つけていざ海へ。

海の底で2頭のイルカが岩の隙間をのぞき込んで遊んでいました。
そのうち1頭が水面を見上げ浮上。
彼女のすぐ横までゆっくりと近づいてきました。
茶色い目で、じーっと彼女を眺め、泳いでいくイルカ。

感動の瞬間。

彼女が長年抱えていた海への恐怖や不安に打ち勝ち、飛び込み、顔をつけ、
イルカとの時間を手にした瞬間でした。

彼女が海から顔を上げた時の、なんとも晴れ晴れとした表情。
その表情を見、その後彼女と話しをして確信しました。

彼らが自分の実を実らせるタイミングは、大人にはわからない。
ただ確実に、日常生活で繰り広げられている全てのことが、実を結ぶ時がくるのだと。

彼女が日常で緊張する場面。
学校での活動や、ピアノの発表会。
そんな時トイレに逃げ込み、泣いていました。
でも最終的には、周りの人の励ましを受け、自ら扉を開け、緊張の場面に踏み出し、
ひとつひとつをクリアしてきました。

不安で仕方がない。
逃げ出したい。
でも、ちょっとみんなを信じて、ちょっと踏み出してみる。

その先にある踏み出したからこそ見える景色。
達成感と喜び。
周りの人達の喜ぶ姿。

そんな体験を、彼女はゆっくりと蓄えてきていたのでしょう。

彼女のペースで着実に乗り越える体験を、一歩一歩積み重ねていたのです。

そのことを、彼女がイルカと対面する姿を見て確信しました。

私たちスタッフは、それぞれの子どもがそれぞれ持って生まれた資質を大切にする。
彼らが彼らの実りを収穫できるまで、大切だと思うことを伝え、見守り、叱り、ぶつかり、褒める。
それを続ける。
そしてつながっていく。

その先に、いつか子どもたちの木につぼみができ、花が咲き、実を結ぶ時が来る。

その時を信じ、その喜びを想像し、日々の色々な瞬間を大切に過ごしていきたいなと思います。

今年の御蔵島も私達にたくさんの贈り物をくれました。

ありがとう、御蔵島。
ありがとう、御蔵島のみなさま。
ありがとう、日々私達を支えてくださっているみなさま。